兄貴の家に行って来た

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↓の5月の記事に書いたとおり、兄貴の家に招待されたので、行ってきた。

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しかし実際に行ったのは、もう一月も前のことで、遅ればせながらのものだ。というのも、正直、内容が良いものには成り得ないと思い、書こうかどうかずっと迷っていて。
でも、あえて、俺らしく、ありのまま思ったことを赤裸々に書こうと思う。
あらかじめ言っておくと、酷い内容になる。心して読んでほしい。

初めての兄貴の家訪問

6月中旬。
俺は初めて兄貴の家に行くことになり、そういえば忘れていた新築祝い(もう建ててから3年経ってるのだが)3万円と新宿で買った6個3000円のゼリーの進物を買ってお宅訪問へと参じることとした。
兄貴の家はビル多き都会の街並みからは離れた東京の郊外にあった。緑があって、人通りのそこそこにある、ベッドタウンというのだろう、家を建てて住むには良い所だった。
兄貴宅の最寄り駅に着き、連絡を取ると、兄貴は既に車で待っていた。ボロい軽の車だった。着てる服も昔はシャレてたのに、今はGAPやユニクロですらないそのへんのおばさんおじさん御用達のテキトーな服屋のものを身に纏っている。でも、それを俺はいいなと思った。こんな車でも、見るからに安物な服を着ていても平然としていられる、飾らなくても堂々と生きていけるだけの世間体に満たされていることが羨ましかった。
家に着くと、兄貴の嫁さんは幼稚園に預けている一人息子を迎えにいっているとのことで、誰もいなかった。
家は綺麗だった。車二台分の駐車場に小さいがガーデニングスペースもあり、とてもお洒落だった。中に入ると、他の部屋は掃除できていないとのことで見たのはリビングだけだが、アイランドキッチンと大きなテレビのあるセンスのいい造りだった。
進物と新築祝いを渡すと、「こんな気をつかわなくていいのに、新築祝いなんていらねーよ」と兄貴は笑ったが、俺は「いや、建ててから初めて来るまでこんなに遅くなって悪かった。どうか受け取ってくれ」と半ば押し付けるように渡した。兄貴は「そうか。じゃあありがとう。ちなみに進物は紙袋から出して箱を差し出すのが礼儀だぞ」と嗜めてくれたが、礼儀は大事だ、勉強になったと素直に俺はその助言を受け入れた。
兄貴は上機嫌で、ホットプレートで焼き肉を振る舞ってくれた。そしてビールを飲んだ。俺は酒があまり飲めないのでせいぜい一缶くらいしかいただかなかったが、兄貴は1~2時間の間に3~4本も開けて飲んでいた。飲みすぎじゃないのか? と言うといつも休日はこれくらい飲んでる、とのこと。仕事のある日もまったく飲まないということはないだろうから、嫁は専業主婦なわりにそれほどでもない兄貴の収入とこの家のローンとか生活費とか考えると、その出費は結構痛いものなのではと心配になったが、まぁ、きっと、本人がそう言うなら大丈夫なのだろう。ってか兄貴は転職すると言っていたが、詳しくは後述することとして今は語らずにおく。
俺が訪問してしばらくの後、嫁さんとその息子が帰ってきた。
見た目偏差値普通のスリムな嫁だ。俺に兄貴の嫁を女として見る性癖は当然ないのでただの素直な感想だが、いい女だなと思った。俺もこういう、隣を歩いていても恥ずかしくない、普通の嫁がほしいと思った。あまりしっかりした感じではないし、兄貴いわく財布はまかせられないどこか抜けたところのある人だが、幸せそうで俺は羨ましかった。
同じ人間のはずなのに、吸ってる空気も、見ている景色も、何もかもが違う。俺には遠くかけ離れて感じた。眩しかった。
ここまで見た兄貴の持つもの全てが、羨ましかった。
喉から手が出るほど欲しかった。

でも、問題は。
ここからで。



兄貴の子供。


俺が会うのは赤ん坊の時以来になる、五歳の一人息子。

これが、ヤバかった。


まず、兄貴の息子は玄関ではなく、窓からリビングに入って来た。玄関から入って来なさいという言葉をまるで聞かず、というか聴こえているのかすら怪しい様子で結構な声で注意している兄貴の顔も見ずにバタバタと室内を走り回り、そして、天井を向いて大声を発した。
「あああああああああ!」
そしてまた走る、跳び跳ねる、意味のない言葉を発し続ける。
最初は元気な子だなと思っていた。「言うこと全然聞かねーじゃねーか」と笑った。だけどしばらく、いや、ほんの数分見ていて異変に気づいた。
まったく目を合わせない。
初対面の俺に物怖じせず突進してきた。そして明るすぎる笑顔で自分が折り紙をハサミで切って作った物や、何が描いてあるのかよくわからない絵を見せてきた。
この子は――普通じゃない。
小さい子なんてそんなもの、という域をあきらかに越えていた。まさか、と思った。
「発達障害があるんだ」
兄貴はぼそりと言った。瞬間、俺はえっとし、あれほど羨ましかったものの全てが瓦解した。
いらない、と思った。
まったく羨ましくなくなった。
俺は俺でよかったと思った。ぼっちで、どうしようもないクソみたいな日々を送る今の俺の生活が、今の兄貴に比べ100億倍マシに思えた。
だって、本当に、ずっと叫んでるんだ。ドタドタ走り回り、食べ物でも構わず目につく物全てをベタベタ触って、投げて、俺が来るからって綺麗に掃除してくれてたのに、ちらかして。
プレステとかDSとかあるけど出しておくとすぐに壊されるというほどで。
そのまま何時間も何を言ってるんだかわからない言葉を、大声で発し続けて、ほんと、近所迷惑にならないのかってくらい延々とそれが続いて。
兄貴とその嫁さんとの落ち着いた会話なんかできやしない。
「ああああああああ!」
叫ぶ子供。もはや奇声だ。
幼稚園でもみんなと整列する場で一人だけ走り回っていたという。
俺はネットの記事をよく見る。発達障害のことはもちろん知っていて、むしろ人より偏見がないつもりだった。
だが初めて目の当たりにしたそれは、想像を遥かに越えていた。
認識が甘かった。
壮絶だった。

夕方5時頃になり、眠くなったのか、子供は電池が切れたように、ようやく大人しくなった。そして寝た。

兄貴は翌日から4日間沖縄に旅行に行くと言った。
俺は思った――あの子供と?
大人しくなんかできないだろ、飛行機とか大丈夫なのか?目を離すとどっかにすっとんでいくだろ、どうやって観光するんだ?海水浴なんかできるのか?
見知らぬ人にでも構わず突進していくだろ、他人に迷惑かけて、親である二人が謝りたおして。
そんな光景がすぐに思い浮かんだ。俺は旅行なんかもう10年以上いってない。でもまったくいいなと思えなかった。
人様を見て、こんな感想を抱いた俺は、人として最低だと思う。でも本当に壮絶だった。血縁者ではあるが、他人事の、正直な感想だ。


大抵の人間は世間体、主にはパートナーの容姿やステータスを物凄く気にしている。妥協はできない。だからこの国は未婚率が上がっている。未婚率については無論、金がないからというのも否めないが、容姿&ステータスで妥協NGという俺のこの認識は今も変わっていないし、実際兄貴もそうした結婚をした。
人に見られても恥ずかしくないレベルの相手を見つけ、結婚をし、幸せを享受していた。
だが、落とし穴というものはどこにあるのかわからないものだ。たった一つのつまづきがあっただけで、俺みたいなやつにこんなことを思われるのだから、世の中は恐ろしい、くわばらくわばら、などとしては性格が悪すぎるが、俺が別段人より性格が悪いといったことはないとあえて言及しておく。
むしろ俺などぬるい。世界はもっと酷いものだ。
発達障害のある家庭の離婚率は高過ぎるほど高い。ぱっと検索してみただけで80%という数字が出てくる。
薄情なことだ。醜くて残酷だ。

こうした本音を書いた記事はなかなか御目にかけないだろうから書いてみたが、気分を害された方はごめんなさい。そしてすぐに綺麗事ばっか書いた記事を見に行って精神を安定させてください。俺みたいな、もしくはもっと酷いやつが実は世の中の大多数であるという現実を受け入れない方が幸せであることは確かです。

さて、兄貴の息子について色々書いたがまだ幼い子供のことである。言葉を解さなかったわけではないので成長すれば大人しくなり落ち着きもするだろう。健常者ほどとは成れずとも、ちゃんと目を見た会話だってできるようになるはずだ。その日を信じて、たとえば兄貴の子供が俺の子供だったとしても俺は見捨てはしない、温かく見守っていこう。

最後に。兄貴の転職について。

子供が寝て俺は帰ることになり、兄貴に歩いて駅まで送ってもらうことになった。
その途上「ちょっと飲んでいくか」と兄貴から誘いがあったので、もう少し飲みの席で喋っていくことにした。
話題はもっぱら転職についてだった。兄貴は課長にまで出世したが今の会社にいても先々やっていけるとは思えないとのことで、もう一度、一からやり直したい、自分の力を試したいとのことだった。兄貴は営業職だったが、また同じ営業職に就くらしい。同じ営業職?と当然思ったし、納得できる理由をイマイチいただけなかったが、兄貴なりの考えがあってのことだ、俺は納得した。
兄貴は今年35になる。今まで転職の経験はない。まだ若いといえる年齢のうちに一度くらいそうした経験はした方がいいかもしれないと俺は思った。転職先はもう内定しているとのこと。年収はちょっと下がるらしい。だが兄貴のことだ、きっと大丈夫。
二人だけの兄弟だ、何かあったらその時は快く力になろう。