親に「実家には帰らない」と言った後日、兄貴から電話がきた

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一昨日ブログに書いたが、俺は今の心境で親に会う気にはなれずにいる。その結果親を怒らせ、宥めすかしたものの少しだけ険悪感を残すかたちになってしまった。
兄貴は親父か母さんかわからないが、きっと俺のことについて何かを言われたのだろう、電話をよこしてこう言った。
「おい、おまえ家に帰んないだってな」
少し怒気が込められた口調だった。歳が2つ離れた兄貴と俺の兄弟仲は決して悪くない、むしろどちらかといえば良い方だ。二十歳を越えて2人でカラオケに行ったこともある。しかしここ数年は俺の方から距離を置いていた。結婚して子供ができてマイホームを買って、順風満帆にやっている兄貴の幸せにあてられるのがきつかったからだ。
「なんで帰らないんだ?」
体裁を取り繕うのにも嫌気が指して、俺は正直に答えた。
「合わせる顔がねーからだよ。言わせんな」
兄貴の怒気が瞬時に引く。きっと兄貴は苦笑いをした。
「ああ…うん、気にするなよ」
「悪いけどもうほっといてくれ」
ずいぶんつっけんどんなことを言った。だが俺はこうも言った。
「ごめんな、放っといてくれなんて言って。こうやって兄貴から電話くれるんだもんな。正直、うれしいよ。別に死ぬ気はねーけど生きててよかったと思う」
本心であった。俺の記憶にある兄貴は俺や両親に対してどこか冷めたところのある人間だったから。たとえば俺と兄貴の立場が逆だったなら兄貴は俺以上に薄情な態度を示していたであろう。その兄貴がこうして心配ともとれる電話をよこしてくれたのだ。これは大変に意外なことで――いや、お互い歳を取ったということか。
兄貴もうれしそうに声を出す。
「今度うちに遊びに来いよ。おまえ、一度もうちに来てないだろ」
「ああ、そういえば兄貴の家、行かなきゃなーと思ってたんだよな」
「建ててからもう3年だ。もう新築じゃなくなっちまったよ」
ちょっとだけ切なそうに言った。
「うん、わかった行くよ」
「おう。それから俺、転職することにしたからさ
…ん?
「6月は丸々休みにしたから、まぁ、6月ならいつでもいいからよ、うちに来い」
「お、おう」
転職…とな?
兄貴はIT系の一部上場企業の社員で、課長クラスまで出世したと聞いていたが…それなのに?
なんだか詳しいことは聞きそびれてしまったが、真面目で損得勘定のしっかりしてる兄貴のことだ、きっと悪いことではない…と思う。
まさかリス…いや、もしかしたら起業という可能性も…んーあり得るんだよなぁ。
まぁ、詳しいことはまた会った時にでも聞こう。
とにもかくにも6月、俺は兄貴に家に遊びに行くことになった。